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著作権Q&A

{Q} 漫画家をしています。今、私の作品(連載漫画)を大々的に米国で事業展開しようという計画が進行中です。米国での事業展開を担当するパートナー企業から、当該作品の米国における著作権を譲渡して欲しいと言われています。米国だけに限定して著作権を譲渡することはできますか?

A 米国だけに限定して著作権を譲渡することは可能です。

著作権は、著作物を創作した時点で、自動的に、ベルヌ条約等国際著作権条約の各加盟国において独立した著作権が発生するというのが国際的に主流の考え方です。つまり、あなたの作品が完成した時点で、その著作権は、日本のみならず、ベルヌ条約の締約国等でも同じように発生しています。そのため、少なくとも国ごとに分割してする譲渡であれば可能だというのが通説です。したがって、米国だけに限定して著作権を譲渡することも可能です。その際、日米両国が加盟しているベルヌ条約の内国民待遇の原則により、日本由来の著作物であっても米国で保護されることに問題はありませんが、若干注意すべき点があります。それは、「著作権の譲渡」と「準拠法」の関係です。というのは、「著作権の譲渡」を規制する法律がアメリカ連邦著作権法(以下、単に米国著作権法といいます。)に準拠することとなった場合、米国著作権法では、「著作権の移転(譲渡と考えても同じです。)」について、日本の法律とはいくつか異なった取扱いをしているからです。いくつかあるのですが、ここでは、以下の2点について簡単に触れておきます。

〇「著作権の移転」(a transfer of copyright ownership)には、「非独占的な使用許諾」(a nonexclusive license:第三者の使用との併存を認めるもの)は含まないが、「独占的使用許諾」(an exclusive license:第三者に重ねて許諾しないことを約束するもの)も含まれるという点(101条の定義参照)。この点、日本法では、独占か非独占かを問わず、「使用許諾」は、「著作権の移転(譲渡)」ではありません。

〇米国においても、著作権は、その「全部」(in whole)又は「一部」(in part)を移転することができますが(201(d)(1))、それが法律上有効(valid)であるためには、「譲渡証書又は移転の覚書若しくは予備的合意書が文書で書面化されており、かつ、移転される権利の所有者又はその適法に授権された代理人によって署名されている」(an instrument of conveyance, or a note or memorandum of the transfer, is in writing and signed by the owner of the rights conveyed or such owners duly authorized agent)ことが要件となります(204(a)参照)。つまり、米国著作権法上、著作権の移転には著作権者等一定の者の「署名」と「文書化」された書面が要求され、これがないと、当該移転は効力を生じないものとされているわけです。日本法で著作権の移転が有効となるためには、「署名」はもちろんのこと、そもそも「文書化(書面化)」すら要求されていません(署名や文書がなくても、著作権の移転は有効に生じることになります。民法176条参照)