Kaneda Legal Service {top}

著作権Q&A

{Q} 私は、今から20年ほど前、学生の頃にペンネームで書いた小説をネットで公開しています(今も同じペンネームで小説を書き続けています)。最近、20年前に私が書いたその小説がある出版社の目に留まり書籍として出版されることになりました。「ペンネームで書いた小説は保護期間が短くなる」と聞いたことがあります。私が20年前に書いた小説の保護期間はどうなるのでしょうか?

A あなたの小説の保護期間は「ネットでの公開(公表)時から70年」となりますが、「あなたの死後70年」まで延長する手段があります。

著作権の存続期間(保護期間)は、著作物の創作の時に始まり、「著作者の死後70年」を経過するまでの間存続するのが原則です(51)
ところで、著作物の中には、著作者の名(本名)を明かさずに「無名」で公表されたり、ペンネームなどの「変名」で公表されるものがあります。このような「無名又は変名の著作物」の著作権について法は、その「著作物の公表後70年間」存続すると規定しています(521項本文)。この規定は、無名又は変名の著作物については、著作者の死亡時点を客観的に把握することの困難性から、死後起算ではなく、公表起算としたものですが、常に公表起算が妥当するわけではなく、いくつか事情が発生した場合には、原則どおり死後起算が適用されることになっています。
もしあなたが今後も「ペンネーム」で小説家として活動していくつもりなら(つまり、自分の本名(実名)は今後も明かさないつもりなら)、著作権法751項の「実名の登録」をしておくとよいでしょう。なぜなら、公表後70年以内に文化庁に実名の登録をしておくと、上述した公表起算は適用されず、死後起算が適用されることになるからです(5222)。あなたが20年前にネットで公表した小説の保護期間は、「ネットでの公表後70年間」ではなく、「あなたの死後70年間」に延長されます。
なお、あなたが使っている「ペンネーム」があなただと同定できるくらいに「周知のもの」になっていれば、上述した実名の登録をしなくても、同様に、「あなたの死後70年間」に延長されます(5221号参照)